
指名検索は企業や商品のブランド力を測る重要な指標です。Webマーケティングの世界において、ユーザーが自社名や商品名で直接検索する「指名検索」の数が増えることは、認知度向上の証であり、ビジネス成果に直結する重要な要素となっています。
本記事では、指名検索の基本概念から検索数の調べ方、そして指名検索を増やすための実践的な方法まで詳しく解説します。
指名検索とは?

指名検索とは、企業名やブランド名、商品・サービス名などの固有名詞を含んだ検索のことを指します。たとえば「Apple iPhone」や「トヨタ プリウス」といった特定のブランドや商品名で検索する場合です。
ユーザーが特定の対象を明確に指定して行う検索行動であるため、その企業や商品に対する認知や関心が既に存在していることを示しています。このため、指名検索数は企業の認知度や市場での注目度を測る重要な指標となっています。
指名検索と一般検索の違いとは
指名検索と対をなすのが「一般検索」です。一般検索は「スマートフォン おすすめ」や「ハイブリッドカー 比較」といった、特定のブランドや商品名を含まない検索を指します。
両者の最大の違いはユーザーの購買意欲の段階にあります。一般検索を行うユーザーは情報収集の初期段階にあることが多く、具体的な購入対象が決まっていない潜在層である可能性が高いです。一方、指名検索を行うユーザーは既に特定のブランドや商品に興味を持っており、購入を検討している顕在層である場合が多いのが特徴です。
マーケティングにおいて、この違いを理解し適切に対応することが重要です。
指名検索数の調べ方と分析手法

指名検索数を知ることは、自社の認知度や市場での競争力を把握するうえで非常に重要です。ここでは、代表的な4つの調査・分析方法について詳しく解説します。
Search Consoleでの検索数調査

Google Search Consoleは、自社サイトの検索パフォーマンスを無料で確認できるツールです。指名検索の調査に活用する方法は以下の通りです。
- Search Consoleにログインし、対象サイトを選択
- 左側のメニューから「検索パフォーマンス」をクリック
- 表示されたデータの下部にある「クエリ」タブを確認
- ここに表示されるキーワード一覧から、自社の企業名や商品名を含む指名検索キーワードを確認
Search Consoleでは、表示回数(検索結果に表示された回数)、クリック数、クリック率、平均掲載順位といった主要指標をチェックできます。これらのデータを分析することで、ユーザーがどのような指名キーワードで検索し、どの程度の頻度でサイトを訪問しているかを把握できるでしょう。
キーワードプランナーでのボリューム調査

Google広告のキーワードプランナーは、より幅広い視点で検索ボリュームを把握するのに役立ちます。このツールを使った指名検索数の調査方法は次の通りです。
- Google広告アカウントにログイン
- 上部のツールアイコンをクリックし、「キーワードプランナー」を選択
- 「新しいキーワードを見つける」または「キーワードの検索ボリュームと予測を確認する」を選択
- 調査したい指名検索キーワードを入力して検索
キーワードプランナーでは、月間平均検索ボリュームや競合性、入札単価の目安などの情報が得られます。また、関連キーワードの提案も表示されるため、ユーザーがどのような関連ワードと併せて検索しているかも把握できます。
なお、Google広告に予算を投入していないアカウントでは、検索ボリュームが範囲(例:1,000-10,000)で表示される点に注意が必要です。正確な数値を確認するには、広告出稿が必要となります。
Google トレンドの指名検索分析

Google トレンドは、キーワードの人気度の変化を時系列で確認できる便利なツールです。指名検索の分析に活用する方法は以下の通りです。
- Google トレンドにアクセス
- 検索ボックスに指名検索キーワードを入力
- 必要に応じて検索条件(地域、期間、カテゴリなど)を調整
Google トレンドの特長は、季節変動や時間的な人気の変化を視覚的に把握できることです。たとえば、テレビCMの放映後に指名検索が増加したかどうかを確認したり、競合他社との人気度を比較したりすることが可能です。
また、地域別の人気度も確認できるため、地域によってブランドの認知度に差があるかどうかを分析することも可能です。ただし、具体的な検索数は表示されず、最大値を100とした相対値で表示される点に注意が必要です。
サードパーティツールでの検索数調査
商用のSEOツールも指名検索数の調査に活用できます。代表的なツールとしては、Ahrefs、SEMrush、Moz、Ubersuggestなどがあります。これらのツールを使った調査方法は次の通りです。
サードパーティツールの利点は、Google提供ツールよりも詳細なデータや追加機能が利用できることです。たとえば、キーワードの難易度分析や、上位表示されているページの詳細情報、競合サイトの分析などが可能です。
以下の表は、主要なサードパーティツールの特徴と月額料金の比較です。
ツール名 | 主な特徴 | 月額料金(最安プラン) |
---|---|---|
Ahrefs | 被リンク分析に強みあり、競合分析も充実 | 約99ドル |
SEMrush | 競合調査と広告分析に強み | 約139.95ドル |
Moz | SEO初心者にも使いやすいUI | 約99ドル |
Ubersuggest | 比較的低コストで基本機能が利用可能 | 約29ドル |
予算や必要機能に応じて、適切なツールを選択することが大切です。また、多くのツールでは無料トライアル期間が設けられているため、購入前に実際に使ってみることをおすすめします。
指名検索の対策を行うメリット

指名検索対策は、マーケティング戦略において非常に重要な位置を占めています。指名検索に取り組むことで得られる3つの主要なメリットについて見ていきましょう。
コンバージョン率向上
指名検索からの流入は、一般検索に比べて格段にコンバージョン率が高いという特徴があります。これは、ユーザーが既に自社ブランドや商品に関心を持っており、購買意欲が高い状態で検索しているためです。
指名検索からの流入は一般検索と比較して、コンバージョン率が2倍以上の効果があります。たとえば、「スマートフォン」という一般検索からの流入がコンバージョン率2%だとすると、「iPhone 14」という指名検索からの流入では4%以上のコンバージョン率が期待できるということです。
このように、指名検索対策を適切に行うことで、高い購買意欲を持ったユーザーを確実に自社サイトへ誘導し、売上に直結させることが可能になります。限られた予算で最大の効果を得るためには、まず指名検索対策を優先することが賢明な戦略と言えます。
検索アルゴリズムの影響を受けにくい流入
検索エンジンのアルゴリズムは頻繁に更新され、それに伴い検索順位が変動することがあります。しかし、指名検索は一般検索と比較して、これらのアルゴリズム変更の影響を受けにくいという大きな利点があります。
指名検索キーワードと自社サイトの関連性は極めて高いため、Googleなどの検索エンジンは、ユーザーが企業名や商品名で検索した場合、その企業の公式サイトや商品ページを優先的に表示する傾向があります。
これは、検索エンジンの基本的な目標である「ユーザーが求める情報を正確に提供する」ことに合致するからです。
ブランド認知度と信頼性向上
適切な指名検索対策は、ブランドの認知度と信頼性の向上にも貢献します。検索結果で自社サイトが適切に表示されることで、ユーザーに対して「信頼できるブランド」という印象を与えることができます。
Google検索において、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)が重要な評価要素となっていますが、指名検索で自社サイトが適切に表示されることは、これらの要素のうち特に「権威性」と「信頼性」の向上につながります。
また、指名検索キーワードで検索した際に、自社サイトだけでなく関連する良質なコンテンツ(公式SNSアカウント、プレスリリース、肯定的な口コミなど)が上位に表示されることで、ブランドイメージがさらに強化されます。これは、直接的な売上向上だけでなく、長期的なブランド価値の構築にも寄与する重要な要素です。
指名検索対策を行わないことによるリスク

マーケティングを行う企業が指名検索の対策を怠ると、見過ごせないリスクが生じます。最も深刻なのは、自社ブランドや商品に関心を持つ重要な見込み顧客を逃してしまうことです。
ユーザーが自社名や商品名で検索しても、検索結果の上位に自社サイトが表示されなければ、そのユーザーは競合他社のサイトやレビューサイトなどに流れてしまいます。
たとえば、「ブランドA 評判」と検索した際に、ブランドAの公式サイトではなく、批判的なレビューサイトや競合の比較サイトが上位表示されるケースを想像してみてください。
このような状況では、せっかく関心を持ってもらったユーザーの印象が悪化し、競合他社に顧客を奪われる結果になりかねません。
また、特に新しいブランドや商品の場合、市場での認知を確立する機会を失うことにもつながります。自社の指名キーワードで検索した際に、関連性の低い情報が表示されると、ブランドイメージの混乱を招き、信頼性の低下を招くでしょう。
指名検索マーケティングの実践ステップ

指名検索マーケティングを効果的に実践するためには、体系的なアプローチが必要です。実践のための4つの重要ステップについて詳しく見ていきましょう。
自社の指名キーワード分析と選定
指名検索対策の第一歩は、自社に関連する指名キーワードを幅広く洗い出し、分析することから始まります。洗い出すべき指名キーワードの種類は企業名・法人名(正式名称、略称、英語表記など)、商品・サービス名(バリエーションや型番も含む)、ブランド名、創業者名・経営者名、特徴的なマスコットキャラクター名、運営しているWebメディア名やアプリ名などが含まれます。
これらのキーワードをリストアップしたら、前述の検索数調査ツールを使って、それぞれの検索ボリュームやトレンド、競合状況を分析します。この分析結果に基づいて、重点的に対策すべきキーワードを優先順位付けします。
優先度決定の基準としては、検索ボリュームの大きさだけでなく、コンバージョンへの貢献度や競合状況なども考慮することが大切です。たとえば、検索ボリュームは小さくても、購入意欲の高いユーザーが使用するキーワード(「〇〇 購入」「〇〇 申し込み」など)は高い優先度で対策すべきでしょう。
SEO対策とリスティング広告の最適な組み合わせ方
指名検索対策では、自然検索(SEO)とリスティング広告を適切に組み合わせることで、より効果的な結果を得ることができます。
SEO対策の基本としては、タイトルタグや見出しタグへの指名キーワードの適切な配置、メタディスクリプションへの指名キーワードの含有と魅力的な説明文の作成、URL構造への指名キーワードの組み込み、内部リンク構造の最適化、高品質なコンテンツの提供などが重要です。
一方、リスティング広告は自然検索での上位表示がまだ達成できていない段階、競合他社が自社の指名キーワードで広告を出稿している場合、特定の商品やキャンペーンへの誘導を強化したい場合などの状況で特に効果を発揮します。
初期段階ではリスティング広告に比重を置き、SEOの効果が表れ始めたら徐々にSEOへ重点を移すアプローチが効果的です。
指名検索数の定期的なモニタリングと効果測定
指名検索マーケティングの成果を最大化するためには、定期的なモニタリングと効果測定が不可欠です。具体的なモニタリングの方法としては、指名キーワードごとの検索順位、指名検索からの流入数、指名検索からのコンバージョン率、指名キーワードの検索ボリュームの変化、競合他社の指名キーワードでの順位や広告出稿状況などの指標を定期的に追跡します。
これらのデータは、最低でも月1回、理想的には週1回程度のペースで確認することをおすすめします。
データ収集には前述のツールを活用し、必要に応じてGoogle アナリティクスなども併用すると良いでしょう。効果測定のためのレポート作成では、純粋なデータだけでなく、その期間に実施した施策や市場環境の変化なども記録しておくことが重要です。これにより、どの施策が効果的だったかを正確に分析できます。
PDCAサイクルに基づく改善
効果的な指名検索マーケティングのためには、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)に基づく継続的な改善が必要です。
PDCAサイクルの段階 | 実施内容 | 具体例 |
---|---|---|
Plan(計画) | 分析結果に基づく具体的な施策と目標の設定 | 「3か月以内に主要5キーワードで検索結果1ページ目に表示される」という具体的目標の設定 |
Do(実行) | 設定した計画に基づくSEO対策やリスティング広告の運用、コンテンツ制作の実施 | タイトルタグの最適化、メタディスクリプションの改善、リスティング広告の出稿など |
Check(評価) | 設定した目標に対する達成度の測定と原因分析 | 「技術的なSEO施策は実施したが、コンテンツの質が不十分だった」などの具体的課題の特定 |
Act(改善) | 分析結果に基づく次のアクションプランの策定 | 成功した施策の継続・強化、効果が不十分だった施策の見直しや改善 |
この一連のサイクルを繰り返すことで、指名検索マーケティングの効果を継続的に高めることができます。市場環境や検索エンジンのアルゴリズムは常に変化しているため、継続的な改善が成功の鍵となります。
指名検索を増やす方法

指名検索数を増やすことは、ブランド認知の拡大と直接的な成果向上につながります。ここでは、指名検索数を効果的に増やすための5つの方法について解説します。
SNSマーケティングによる認知拡大
SNSは、指名検索数を増やすための強力なチャネルです。各プラットフォームの特性を活かした戦略を展開することで、効果的にブランド認知を広げられます。
SNSプラットフォーム | 特徴と活用ポイント | 効果的なコンテンツ戦略 |
---|---|---|
SNSプラットフォーム | 特徴と活用ポイント | 効果的なコンテンツ戦略 |
Twitter(X) | ・即時性が高く、トレンドに乗りやすい ・短文でも拡散しやすい ・ハッシュタグ機能が有効 | ・タイムリーな情報発信 ・ユーザーとの対話重視 ・適切なハッシュタグの活用 |
・視覚的なインパクトを重視 ・若年層へのリーチに強み ・ストーリーズで日常的な発信が可能 | ・魅力的な商品写真の投稿 ・ブランドの世界観を表現する質の高い画像 ・ストーリーズやリール機能の活用 | |
YouTube | ・詳細情報を動画で伝えられる ・検索エンジンとしての側面も持つ ・長期的にアクセスが継続する | ・商品の使用方法や特徴を解説する動画 ・ブランドストーリーを伝える動画 ・適切なタイトルや説明文の設定 |
・幅広い年齢層にリーチ可能 ・ビジネス向け機能が充実 ・詳細な情報発信に適している | ・企業としての公式情報の発信 ・イベント告知やコミュニティ形成 ・ターゲティング広告の活用 | |
TikTok | ・若年層への強力なリーチ ・トレンド性の高いコンテンツが拡散 ・短時間で印象的な情報発信が可能 | ・トレンドを活用した商品紹介 ・親しみやすく娯楽性のある動画 ・ブランド認知に焦点を当てた内容 |
どのプラットフォームでも、一貫したブランドメッセージと定期的な投稿が認知拡大の鍵となります。また、フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率(いいね、コメント、シェアなどの反応率)を高めることを意識しましょう。
高いエンゲージメントはアルゴリズム上の優遇だけでなく、ユーザーの記憶に残りやすくなり、後の指名検索につながります。
ディスプレイ広告やリスティング広告の活用
Web広告は、短期間でブランド認知を高め、指名検索を増やす効果的な手段です。特に以下の2種類の広告が有効です。
ディスプレイ広告は、Webサイト上のバナー広告や動画広告などを指し、視覚的なインパクトでブランド認知を広げるのに適しています。ディスプレイ広告で指名検索を増やすポイントは、広告クリエイティブの中に「〇〇で検索」といったメッセージを含めることです。これにより、広告を見たユーザーが後で検索する行動を促せます。
一方、リスティング広告は、一般キーワードで広告を出稿することで、まだ自社を知らないユーザーに対してアプローチできます。たとえば「格安スマホ」というキーワードで広告を出稿し、自社ブランドに触れてもらうことで、後日「〇〇スマホ 料金」といった指名検索につながる可能性が高まります。
オウンドメディア運営による検索数増加策
自社が運営するオウンドメディア(ブログやコラムページなど)は、指名検索数を増やすための長期的な資産となります。オウンドメディアで指名検索を増やすためのポイントは以下の通りです。
まず、業界の課題や関心事に関する質の高いコンテンツを継続的に発信することで、自社の専門性や信頼性をアピールします。これにより、一般検索から流入したユーザーが自社ブランドに関心を持ち、後日指名検索するきっかけとなります。
コンテンツの種類としては、ハウツー記事、業界トレンド分析、ケーススタディ、インタビュー記事などが効果的です。特に「なぜ」「どのように」という疑問に答えるコンテンツは、読者の役に立ちやすく、共有されやすい傾向があります。
プレスリリースやメディア露出の活用
プレスリリースとメディア露出は、第三者の信頼性を借りてブランド認知度を向上させるアプローチです。これらを効果的に活用することで、指名検索の増加につなげることができます。
プレスリリースは新製品発表、事業展開、決算情報、CSR活動など、企業の重要な情報発信の手段となります。配信においては、PR TIMESやValuePressといった専門サービスの利用が効率的で、これらのプラットフォームは多くのメディアとのネットワークを持ち、情報拡散に有利に働きます。
TVや新聞、雑誌などの従来型メディアへの登場も指名検索増加に大きな効果をもたらします。業界専門家としての意見提供やインタビュー対応は、企業の専門性を印象づけると同時に、オーディエンスの検索行動を促進します。
インフルエンサーマーケティングの活用
インフルエンサーマーケティングは、指名検索数を効果的に増やす最新の手法の一つです。特に若年層へのリーチに優れており、適切に活用することでブランド認知を急速に拡大できます。
インフルエンサーを選定する際は、フォロワー数だけでなく、エンゲージメント率(フォロワーの反応の質と量)、フォロワー層と自社のターゲット層の一致度、過去のブランドコラボレーションの実績と質、インフルエンサーの専門性や信頼性、自社ブランドとの親和性などを重視することが重要です。
効果測定には、専用のトラッキングリンクやクーポンコードを用意し、流入数や成約数を追跡することをおすすめします。これにより、どのインフルエンサーやどの形式のコラボレーションが最も効果的かを分析し、次回の施策に活かすことができます。
まとめ
指名検索は、企業名や商品・サービス名などの固有名詞を含んだ検索であり、ユーザーがすでに興味を持っている顕在層による検索行動です。このため、指名検索からの流入はコンバージョン率が高く、ビジネス成果に直結しやすい特性を持っています。
効果的にマーケティングを行うためには、キーワード分析と選定、SEO対策とリスティング広告の組み合わせ、定期的なモニタリングと効果測定、PDCAサイクルに基づく改善という一連のステップを踏むことが必要です。
施策を体系的に実施することで、ブランドの認知度を高め、顕在層からの流入を増やし、ビジネス成果の向上につなげることができるでしょう。指名検索対策は、デジタルマーケティング戦略の中で優先度の高い取り組みとして位置づけ、継続的に改善していくことをおすすめします。