
ウェブサイトを運営していく上で、検索エンジン最適化(SEO)は避けて通れない重要な要素ですが、その中でも「構造化マークアップ」という技術をご存知でしょうか。Googleなどの検索エンジンで上位表示を目指すなら、この技術の理解と活用が大きな差を生み出す可能性があります。
本記事では、構造化マークアップの基本概念から実装方法、検証方法までを詳しく解説し、SEOへの影響や効果的な活用法についても紹介していきます。
構造化マークアップとは?

構造化マークアップとは、Webページのコンテンツに意味を持たせるためのマークアップ技術です。検索エンジンのクローラーがコンテンツの内容を正確に理解できるようにHTMLに特定の属性や要素を追加することで、ページの情報構造を明確に伝えることができます。
通常のHTMLマークアップがブラウザに「どのように表示するか」を指示するのに対し、構造化マークアップは検索エンジンに「このコンテンツが何を意味するか」を伝えます。例えば、単なるテキストとして表示されている「株式会社シーエムエー」という文字列が会社名であることを検索エンジンに理解させることができるのです。
通常のマークアップとの違い
構造化マークアップと通常のHTMLマークアップには明確な違いがあります。通常のHTMLは主にコンテンツの表示形式を定義するのに対し、構造化マークアップはコンテンツの意味を定義します。
以下の表で、両者の主な違いを比較してみましょう。
通常のHTMLマークアップ | 構造化マークアップ |
---|---|
ブラウザへの表示指示が主目的 | 検索エンジンへの意味伝達が主目的 |
人間が見るための視覚的な構造化 | 機械(検索エンジン)が理解するための意味的な構造化 |
タグは表示方法を定義(<h1>, <p>, <div>など) | タグや属性は意味を定義(itemtype, itempropなど) |
SEOへの影響は間接的(見出しタグなど) | SEOへの影響はより直接的(リッチリザルトの表示など) |
例えば、レシピページの場合を考えてみましょう。
<!– 通常のHTMLマークアップ –>
<h1>チョコレートケーキのレシピ</h1>
<p>調理時間: 60分</p>
<h2>材料</h2>
<ul>
<li>小麦粉 200g</li>
<li>砂糖 100g</li>
<li>ココア 30g</li>
</ul>
<!– 構造化マークアップ(JSON-LD形式の例) –>
<script type=”application/ld+json”>
{
“@context”: “http://schema.org”,
“@type”: “Recipe”,
“name”: “チョコレートケーキのレシピ”,
“cookTime”: “PT60M”,
“recipeIngredient”: [
“小麦粉 200g”,
“砂糖 100g”,
“ココア 30g”
]
}
</script>
通常のHTMLだけでは、検索エンジンはこれがレシピであることを推測はできても、調理時間や材料の区別を正確に理解することは難しいでしょう。一方、構造化マークアップを施すことで、これがレシピであり、調理時間は60分、材料には小麦粉・砂糖・ココアが必要であることを明確に伝えることができます。
構造化データの種類とフォーマット
構造化データを実装する方法には、主に3つのフォーマットがあります。それぞれの特徴と違いを以下の表で比較します。
フォーマット | 実装方法 | 特徴 | Googleの推奨度 |
---|---|---|---|
JSON-LD | <script>タグを使用してヘッダやボディ内に配置 | • HTMLとデータを分離できる<br>• 実装・管理が容易<br>• 動的に生成可能 | 最も推奨 |
Microdata | HTML要素に直接属性を追加<br>(itemscope, itemtype, itemprop) | • HTMLに直接埋め込む<br>• 視覚的に関連付けられる | 対応 |
RDFa | HTML要素に直接属性を追加<br>(vocab, typeof, property) | • より高度な意味記述が可能<br>• 他の規格との互換性 | 対応 |
現在、Googleは特にJSON-LDフォーマットを推奨しています。これは、HTMLコードとデータを明確に分離でき、実装・管理が容易であるためです。
JSON-LD(JavaScript Object Notation for Linked Data)の基本的な構造は以下のようになります。
<script type=”application/ld+json”>
{
“@context”: “http://schema.org”,
“@type”: “Corporation”,
“name”: “株式会社シーエムエー”,
“url”: “https://www.akindo2000.net/”
}
</script>
この例では
- “@context”: “http://schema.org” – Schema.orgの語彙を使用することを宣言
- “@type”: “Corporation” – このデータが会社(Corporation)に関するものであることを指定
- “name”: “株式会社シーエムエー” – 会社名を指定
- “url”: “https://www.akindo2000.net/” – 会社のURLを指定
Schema.orgのボキャブラリには、さまざまなタイプ(Organization、LocalBusiness、Product、Articleなど)が定義されており、各タイプに対して使用できるプロパティが規定されています。適切なタイプとプロパティを選択することで、検索エンジンにコンテンツの意味を正確に伝えることができます。
構造化マークアップがSEOに与える影響

構造化マークアップは、SEOに直接的・間接的な影響を与えます。まず重要なのは、構造化データ自体が検索順位のランキング要因として直接影響するわけではないという点です。Googleは公式に、構造化データはランキングシグナルではないと述べています。
しかし、間接的にはSEOに大きく貢献する可能性があります。
構造化マークアップの効果を最大化するには、単に技術的に正しく実装するだけでなく、ユーザーにとって価値のある情報を提供することが重要です。例えば、商品の構造化データを実装する場合、価格、在庫状況、レビュー評価など、ユーザーの意思決定に役立つ情報を含めることが効果的です。
インデックス登録の効率化
構造化マークアップはウェブサイトのインデックス登録プロセスを効率化する効果があります。検索エンジンのクローラーがウェブページをクロールする際、構造化データがあればコンテンツの種類や関連性を迅速かつ正確に特定できるようになります。
ページの主要コンテンツが「記事」「製品」「レシピ」など何であるかを明確に示すことで、クローラーは適切なカテゴリとしてインデックスでき、関連する検索クエリへの適合度が向上します。ページ内の重要な情報(発行日、著者、主題など)を構造化データで示すことで、クローラーはこれらの情報を確実に認識でき、大量のコンテンツがあるページでも、重要な情報を見逃す可能性が減ります。
コンテンツ認識の向上
構造化マークアップを実装することで、検索エンジンによるコンテンツ認識が大幅に向上します。検索エンジンが特定の情報を正確に識別できるようになるのです。商品情報の場合、価格、在庫状況、レビュー評価などを明確に区別して認識できるようになります。
イベント情報の場合、開催日時、場所、チケット情報などを個別の情報として理解できます。レシピの場合、調理時間、材料、栄養成分などを構造化された情報として把握できます。また、医療や法律などの専門分野の用語も、適切な構造化データで意味づけすることで理解が促進されます。
同じ単語でも文脈によって意味が異なる場合も、構造化データで明確化できます。
リッチリザルト表示
造化マークアップの最も目に見える効果の一つが、検索結果でのリッチリザルト表示です。リッチリザルトとは、通常のタイトルとスニペット(説明文)に加えて、追加情報や視覚的要素を含む検索結果のことです。パンくずリスト、FAQ、商品情報、レシピ、イベント、ローカルビジネス、求人情報、動画など、様々な種類のリッチリザルトがあり、それぞれに対応する構造化データタイプが存在します。
リッチリザルト表示によるクリック率向上の効果は業種やコンテンツタイプによって異なりますが、一般的に通常の検索結果に比べて20〜30%のCTR向上が見られます。
構造化マークアップの実装方法

構造化マークアップをウェブサイトに実装する方法には主に3つのアプローチがあります。それぞれに特徴と利点があり、サイトの状況や知識レベルに応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
HTML上での構造化データの直接マークアップ
HTMLに直接構造化データを埋め込む方法は、最も柔軟で細かい制御が可能なアプローチです。特にGoogle推奨のJSON-LDフォーマットを使った実装方法について説明します。
JSON-LDは、通常<head>または<body>内に<script type=”application/ld+json”>タグを使用して配置します。以下は基本的な記述例です。
<script type=”application/ld+json”>
{
“@context”: “https://schema.org”,
“@type”: “LocalBusiness”,
“name”: “株式会社シーエムエー”,
“url”: “https://www.akindo2000.net/”,
“telephone”: “053-459-1510”,
“address”: {
“@type”: “PostalAddress”,
“streetAddress”: “板屋町111-2 アクトタワー15F”,
“addressLocality”: “浜松市中央区”,
“postalCode”: “430-7715”,
“addressRegion”: “静岡県”,
“addressCountry”: “JP”
},
“openingHoursSpecification”: {
“@type”: “OpeningHoursSpecification”,
“dayOfWeek”: [
“Monday”, “Tuesday”, “Wednesday”, “Thursday”, “Friday”
],
“opens”: “09:00”,
“closes”: “18:00”
}
}
</script>
この例では、「株式会社シーエムエー」という地域ビジネスの基本情報(名前、URL、電話番号、住所、営業時間)を構造化データとして記述しています。
Schema.orgボキャブラリの活用
Schema.orgのボキャブラリは、検索エンジンにコンテンツの意味を伝えるための共通言語として機能します。効果的な構造化データを実装するためには、このボキャブラリを適切に活用することが重要です。
Schema.orgの主要なタイプとその特徴を以下の表に示します。
タイプ | 説明 | 適した用途 | |
---|---|---|---|
Organization | 企業や団体の情報 | name, logo, url, address | 企業サイト、団体サイト |
LocalBusiness | 実店舗ビジネスの情報 | name, address, openingHours, telephone | 店舗ビジネス、サービス業 |
Person | 人物の情報 | name, jobTitle, worksFor, birthDate | プロフィールページ、著者情報 |
Product | 商品の情報 | name, image, description, offers, review | ECサイト、商品紹介ページ |
Article | 記事コンテンツ | headline, author, datePublished, image | ニュースサイト、ブログ |
BlogPosting | ブログ記事 | headline, author, datePublished, image | ブログ、個人メディア |
Recipe | 料理レシピ | name, recipeIngredient, recipeInstructions, cookTime | レシピサイト、料理ブログ |
Event | イベント情報 | name, startDate, location, offers | イベント情報サイト |
FAQPage | よくある質問ページ | mainEntity (Question + Answer) | FAQ・Q&Aページ |
WebSite | ウェブサイト全体 | name, url, potentialAction (SearchAction) | サイト全体の表現 |
各タイプには、必須プロパティと推奨プロパティがあります。例えば、Productタイプの実装例は以下のようになります。
<script type=”application/ld+json”>
{
“@context”: “https://schema.org”,
“@type”: “Product”,
“name”: “高機能ビジネスバッグ”,
“image”: “https://example.com/product-image.jpg”,
“description”: “耐水性と収納力を兼ね備えたビジネスバッグ”,
“brand”: {
“@type”: “Brand”,
“name”: “ExampleBrand”
},
“offers”: {
“@type”: “Offer”,
“price”: “12800”,
“priceCurrency”: “JPY”,
“availability”: “https://schema.org/InStock”,
“url”: “https://example.com/product”
},
“aggregateRating”: {
“@type”: “AggregateRating”,
“ratingValue”: “4.5”,
“reviewCount”: “89”
}
}
</script>
wordpressのプラグインを使用する方法
WordPressを使用しているサイトであれば、プラグインを活用して構造化マークアップを簡単に実装することができます。これは特に技術的知識が限られている場合や、多数のページに効率的に構造化データを追加したい場合に便利です。
以下の表に、代表的な構造化データ対応のWordPressプラグインとその特徴を示します。
プラグイン名 | 主な機能 | 対応する構造化データタイプ | 無料/有料 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
Yoast SEO | SEO全般+構造化データ | Article, Organization, Person, WebSite, BreadcrumbList | 基本無料(Premium版あり) | SEO対策機能が充実、基本的な構造化データに対応 |
Rank Math | SEO全般+構造化データ | 多数のタイプに対応(30種類以上) | 基本無料(Pro版あり) | 無料版でも多くのタイプをサポート、設定が直感的 |
Schema Pro | 構造化データ専用 | 多数のタイプに対応(13種類以上) | 有料 | カスタムフィールドとの連携、詳細な設定が可能 |
All in One SEO | SEO全般+構造化データ | Article, Product, LocalBusiness, FAQなど | 基本無料(Pro版あり) | 使いやすいインターフェース、基本的なタイプに対応 |
WP Schema Pro | 構造化データ専用 | 多数のタイプに対応 | 有料 | 豊富なテンプレート、カスタマイズ性が高い |
構造化マークアップのチェックと効果測定方法

構造化マークアップを実装した後は、正しく実装されているかをチェックし、その効果を測定することが重要です。ここでは、構造化データの検証ツールの使い方と効果測定の方法について説明します。
構造化データテストツールを使った検証方法
構造化データが正しく実装されているかを検証するためには、専用のテストツールを使用することが重要です。ここでは、特にスキーママークアップ検証ツールの使い方と検証のポイントについて詳しく説明します。
スキーママークアップ検証ツール(Schema Markup Validator)は、Schema.orgの公式ツールで、構造化データの構文が正しいかどうかをチェックします。
【使用手順】
- Schema Markup Validatorにアクセスする
- 検証したいページのURLを入力するか、HTMLコードを直接貼り付ける
- 「テストを実行」または「Validate」ボタンをクリックする
- 検証結果を確認する
Googleサーチコンソールでの構造化データの分析

Googleサーチコンソール(Google Search Console)は、サイト全体の構造化データの状態を確認し、その効果を測定するための強力なツールです。ここでは、サーチコンソールを使った構造化データの分析方法について詳しく説明します。
「拡張検索結果」レポートの見方:
- Googleサーチコンソールにログインする
- 左側のメニューから「拡張検索結果」を選択する
- 表示されるレポートでは、サイト内のリッチリザルトの種類ごとに以下の情報が確認できます。
- 有効なアイテム数(エラーのない構造化データの数)
- エラーのあるアイテム数
- 警告のあるアイテム数
- インプレッション(検索結果での表示回数)
- クリック数
- クリック率
まとめ
本記事では、構造化マークアップについて基本概念から実装方法、検証・効果測定まで詳しく解説してきました。構造化マークアップは、ウェブページのコンテンツに意味を持たせ、検索エンジンがより正確に理解できるようにする重要な技術です。通常のHTMLとの大きな違いは、単なる表示形式ではなくコンテンツの意味を定義する点にあります。
構造化マークアップを実装することで、検索エンジンによるコンテンツ認識の向上、リッチリザルト表示の可能性向上、インデックス登録の効率化などのメリットが得られます。
実装後はスキーママークアップ検証ツールやリッチリザルトテスト、Googleサーチコンソールを活用して検証と効果測定を行うことが重要です。構造化データはSEOの直接的なランキング要因ではありませんが、ユーザー体験の向上やクリック率の改善を通じて間接的に貢献します。
今後は検索技術やAIの発展に伴い、構造化データの重要性はさらに高まるでしょう。特に音声検索や対話型検索の普及により、コンテンツの意味を正確に伝える構造化マークアップの実装が、ウェブサイトの成功において一層重要な要素となっていくことが予想されます。